この記事で分かること
- 8月の水耕栽培で注意すべきポイント
- 必要な道具と代替案の選び方
- クラトキー法とDWC方式の特徴と選び方
- pH5.5の水の作り方と初期セットアップ手順
- よくある失敗の原因と対処法
はじめに:テーマの要点
8月は気温が高く、レタスなどの葉物は弱りやすい季節です。水耕栽培では液温や光、空調管理が特に重要になります。適切な作物選びと環境管理で、初心者でも安心して始められます。
まずは道具と材料(中学生でもそろえられる)
用途 | 最低限 | 推奨 | 代替 | 概算価格 | 使い方ひとこと | 安全ポイント |
---|---|---|---|---|---|---|
栽培容器 | 遮光プラスチック容器 | 専用ネットポット+遮光容器 | 黒色バケツ | 1000〜3000円 | 遮光して藻を防ぐ | 透明容器・段ボールは非推奨(藻・吸水・不衛生) |
育苗スポンジ | 水耕用スポンジ | ロックウール | なし(発芽率低下) | 数百円 | pH5.5の水で予備浸水 | 清潔に扱う |
pHメーター | デジタルpHメーター | 校正済み高精度メーター | pH試験紙(目安) | 2000〜5000円 | こまめに校正し測定 | 液体は直接手で触らない |
ECメーター | デジタルECメーター | 校正済み高精度メーター | なし | 2000〜6000円 | 希釈液で校正後使用 | 水で洗浄し保管 |
ライト | LEDライト(白色) | 植物育成用LED | 蛍光灯(非推奨) | 3000〜1万円 | 距離調整で光量管理 | 発熱注意 |
エアポンプ | 小型エアポンプ(DWC用) | タイマー付き静音タイプ | なし(クラトキーなら不要) | 2000〜5000円 | 24時間稼働推奨 | 水濡れ注意 |
pH調整剤 | pHダウン・pHアップ液 | 園芸用水耕対応タイプ | 酢・重曹は不可 | 1000円前後 | 少量ずつ入れて混ぜる | 手袋・換気必須、子どもは大人と |
透明容器・段ボールは非推奨です。藻が発生しやすく、吸水や不衛生の原因になります。遮光できる容器を選びましょう。
栽培方式の選び方(クラトキー法 / DWC)
クラトキー法とは
クラトキー法は水面と根の間に空気層を作る方式です。空気層は2〜3cmが目安です。
- 長所:ポンプ不要で静音、停電に強い
- 短所:水質管理がやや難しい
- 向く作物:レタス、ハーブ、バジル、シソ、空心菜
DWCとは
DWC(深水養液栽培)は根を常に酸素供給された水に浸す方式です。24時間エアレーションが必須です。
- 長所:成長が早く管理が比較的簡単
- 短所:ポンプの音が気になる場合がある
- 向く作物:レタス、ハーブ、ミニトマト、キュウリ、イチゴ
どちらを選ぶ?初心者の判断基準
静音性やコスト、メンテナンス頻度が異なります。停電時の耐性も考慮しましょう。
方式 | ポンプ有無 | 難易度 | 騒音 | コスト | メンテ頻度 | 向く作物 | ひとことで |
---|---|---|---|---|---|---|---|
クラトキー法 | なし | 中 | 無音 | 低 | 中 | 葉物中心 | 静かで停電に強い |
DWC | あり(24hエアレーション) | 中 | ややあり | 中 | 低 | 葉物・実もの | 成長早く管理簡単 |
写真なしでも分かる:pH5.5の水の作り方
pH調整剤は酸性のため、手袋と換気を必ず行いましょう。子どもは必ず大人と一緒に作業してください。
5Lの水を基準にした手順です。
- pHメーターで水のpHを測る。
- pHダウン液を1〜2滴入れる。
- よくかき混ぜる。
- 再度pHを測る。
- 目標pH5.5に達するまで、2〜4を繰り返す。
- 行き過ぎた場合はpHアップ液を1滴ずつ入れて調整。
- 調整後の水はラベルを貼って管理。
コツは原液を別容器で薄めてから微調整することです。
初期セットアップ手順
準備
道具をそろえ、容器は遮光し清潔にします。
【理由】藻の発生を防ぎ、衛生的な環境を作るため。
【つまずき】透明容器使用で藻が発生しやすい。
【チェック】遮光容器か確認。
播種
育苗スポンジをpH5.5の水で予備浸水し、1粒ずつ播種します。直まきは避けましょう。
【理由】発芽率を上げ、根の健康を保つため。
【つまずき】直まきで根が絡み管理が難しくなる。
【チェック】育苗スポンジに1粒だけ播種。
発芽管理
適温(20〜25℃)でライトを14〜16時間点灯し、湿度を保ちます。
【理由】発芽と初期成長を促進。
【つまずき】温度不足で発芽遅延。
【チェック】温度計とライトタイマーを確認。
定植
発根・本葉が出たらネットポットに移し、液面と空気層は2〜3cmに調整します。
【理由】根の呼吸を確保するため。
【つまずき】液面が高すぎて根腐れ。
【チェック】液面と空気層の距離を測る。
ライト設定
PPFDは苗期150–200、葉物生育期250–350 µmol·m⁻²·s⁻¹、点灯時間は14–16時間に設定します。
【理由】光合成効率を最大化。
【つまずき】光量不足で徒長。
【チェック】ライト距離とタイマー確認。
初週の観察
葉の色、根の状態、藻の発生を毎日チェックします。
【理由】早期異常発見と対処。
【つまずき】異常に気づかず悪化。
【チェック】葉の変色や液の濁り確認。
養液・光・温度の管理
フェーズ | PPFD (µmol·m⁻²·s⁻¹) | 点灯時間 (h) | ライト距離例 (cm) | DLI |
---|---|---|---|---|
発芽〜子葉 | 50–150 | 14–16 | 40–60 | 2.5–8.6 |
苗 | 150–200 | 14–16 | 30–40 | 7.6–11.5 |
葉物生育 | 250–350 | 14–16 | 20–30 | 12.6–20.2 |
DLI(光合成日積算量)はPPFDと点灯時間から計算しています。
pHは5.5–6.5を維持し、開始時は5.8が目安です。ECは葉物0.8–1.6 mS/cmで、高温期は低めに調整します。液温は18–22℃、室温は18–26℃が理想です。養液の水替えは7〜14日に1回行います。
よくある失敗と対処
症状 | 原因 | 対処 |
---|---|---|
根腐れ | 液面が高すぎる、酸素不足 | 液面を下げ空気層2–3cm確保、エアレーション強化 |
藻の発生 | 光が透過する容器使用、養液の遮光不足 | 遮光容器に変更、養液補充も遮光 |
徒長 | 光不足、温度高すぎ | ライトの光量・距離調整、温度管理 |
葉焼け | ライトが近すぎる、強光 | ライト距離を遠ざける、点灯時間調整 |
虫の発生 | 衛生不良、密閉不足 | 清掃徹底、虫よけ対策 |
季節のおすすめと注意点(8月時点)
6〜8月はレタスは冷却や空調が無い場合は非推奨です。代替としてバジル、シソ、空心菜が育てやすいです。液温は18–22℃を保ち、遮光や送風で環境を整えましょう。
9〜11月は葉物の再スタートに適した時期で、点灯時間の見直しを行います。
12〜2月は日照不足対策としてLEDを14–16時間点灯し、室温18–26℃、液温18–22℃を維持します。
3〜5月は立ち上げに適した時期で、葉物やハーブ中心の栽培がおすすめです。実ものは苗の準備を進めましょう。
用語ミニ辞典(短い説明)
- pH:水の酸性・アルカリ性の度合いを表す数値。
- EC:電気伝導度のことで、養液の肥料濃度の目安。
- PPFD:植物が光合成に使う光の量(単位面積あたり)。
- DLI:1日あたりの光合成に使われる光の総量。
- エアレーション:水中に酸素を供給すること。
FAQ(中学生の疑問あるあるに答える)
Q:pH5.5の水の作り方は?
少量ずつpH調整剤を入れ、よく混ぜてからpHを測ります。以下の手順です。
- 水のpHを測る。
- pHダウン液を1滴入れる。
- よくかき混ぜる。
- pHを測る。
- 目標まで繰り返す。
Q:ECメーターの選び方と使い方は?
校正機能付きのデジタルECメーターがおすすめです。使用前に校正液で校正し、使用後は水で洗浄します。
Q:PPFDが測れない場合は?
ライトからの距離を目安に調整します。徒長や葉焼けが起きたら光量が不足または過剰のサインです。
Q:DWCの空気量はどのくらい?
24時間エアレーションが必要で、容器あたり毎分1〜2Lの空気供給が目安です。溶存酸素(DO)は5〜8 mg/Lを保ちます。
Q:透明容器で藻が出る理由と対策は?
光が透過し藻が発生しやすくなります。遮光容器に替え、養液補充時も遮光を心がけましょう。
Q:真夏にレタスが弱る理由と代替は?
液温上昇と高温環境が原因です。代替としてバジル、シソ、空心菜がおすすめです。
Q:水替えの頻度と合図は?
7〜14日に1回が目安です。においや濁り、ECのズレがあれば早めに交換しましょう。
Q:肥料A・Bの入れ方は?
肥料AとBは別容器で溶かし、希釈後に混合します。混合順序を守り、濃度を調整してください。
Q:停電時の対処は?
クラトキー法なら空気層を確保しておけば停電時も根腐れリスクが下がります。DWCはエアレーション停止に注意。
Q:根が茶色い・臭いときは?
根腐れの可能性があります。液面調整と水替え、エアレーション強化を行いましょう。
Q:ライトは何ワットが良い?
ルーメンよりPPFDを重視します。植物育成用LEDでPPFDの目安に合わせて選びましょう。
Q:スポンジやロックウールの廃棄と衛生は?
使用後は乾燥させてから廃棄し、次回使用時は清潔な状態で使いましょう。
まとめ
- 容器は遮光し、空気層2–3cmを確保する
- 播種は育苗スポンジやロックウールで予備浸水し、直まきは避ける
- pHは5.5–6.5、開始は5.8目安で調整する
- ECは葉物0.8–1.6 mS/cm、高温期は下限寄りにする
- PPFDは段階的に調整(発芽50–150→苗150–200→生育250–350)、点灯時間は14–16時間
- 液温は18–22℃、水替えは7–14日に1回行う
- DWCは24時間エアレーションを行い、毎分1–2Lの空気量、DOは5–8 mg/Lを目指す